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まつげの上を列車の振動が伝わってきました。
hunaは、まったく動けずに近づいてくる列車を待ちました。
まばたきができなくて、ぽたぽた落ちる涙が水かさを増していきます。
それがどんどんと溜まっていき、
ちょうど目の高さまでの透明な海をつくりました。
列車は海の上を水しぶきをあげ、すごいスピードで走ってきました。
どこからともなく響き渡るホイッスルの音とともに、水しぶきをあげて
目の直前で止まりました。
シルクハットに、緑のひげ、まるでサーカスの団長のような服をきています。
男は怒った顔をしてこういいました。
「とうちゃぁく!」
男はポケットから大きなハサミを取り出し、
じゃきん、とhunaのまつげを切りました。
涙の海は一気にひけ、支配人は列車ごと、まつげから転げ落ちました。
そして地面に横たわりながらも、
「さてさて、どうしてくれよう?」
とにやりとしました。
hunaの体は相変わらず、重たく自由がききません。
「退屈しのぎにはなるかな。」
と大きな音がしました。
シルクハットの支配人の服の色が、赤から黄色に変わったかと思うと、
地面が揺れ始め、hunaの目の前に地中から大きな岩がせり上がってきました。
そしてその顔は、巨大な支配人の顔面になっています。
hunaは呼吸をゆっくりと整えました。
体に少しずつ力をいれていき、なんとか息を吸い込み、吐き出しました。
これでようやく一呼吸です。
(これは本当にまずい)とhunaはあせりました。
いままでの幻覚とは、迫力が違います。
あまり考えたくはないのですが、
目の前にいるのは「支配人」とよばれる化け物のような気がするのです。
「そのとおり、わが名は支配人だ。」
巨大な顔面は地響きを起こしながらしゃべりました。
顔面は無表情になり、本当に岩に彫った彫刻のようになってしまいました。
「ほうほう、お前はあの氷の国の女王か」
と後ろから声がしました。
支配人はいつの間にか、ピンクのシルクハット姿に戻っているのです。
hunaは体の自由もきかず、
考えていることがどんどん読み取られていくことに恐怖を感じました。
「はあはあ、これは面白いことになった。」と支配人は笑いました。
「前回もお前の国だけが抵抗しつづけたからな。」
そういうと、hunaの足元に円形の亀裂がはいりました。
そしてその地盤が一気に持ち上がりました。
hunaをのせた岩はシュルシュルと伸びてゆきます。
「あぁ」
と悲鳴をあげてhunaは気圧の変化に痛む耳を押さえてかがみこみました。
地盤はそれも構わずに、雲の上まで伸びていきました。
支配人は退屈そうにそれを眺めました。
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「ひうな が いない」
とunaは馬車のなかで声を上げました。
香水師が目をこすりながら、鼻をひくりとさせ、首をひねりました。
「おかしいな。ここらにはいない。」
外に出てみると、cunaと雪男はゆきだるま作りをしていました。
「きゅーな ひうな しらんか」
とunaは聞きました。
「あんな意地悪知らない」
とcunaは答えました。
香水師は、さまざまな角度で匂いを探しますが、やはりどこにも見つかりません。
uma(馬)も困惑しきっています。
「ひうな かえっちゃった のか」とunaはつぶやきました。
するとそれを聞いたcunaが
「あいつ、なぞなぞ思いつかないから逃げた!」
といいながらcunaがふわふわと浮かび上がりました。
ぶつぶつと文句をいいながら、ゆっくりゆっくりと空にあがっていきます。
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hunaは寒さにガタガタ震えながらも、できるだけ冷静に努めました。
今度は体の自由がききますが、寒さが堪えます。
hunaは四つんばいになりながら、ゆっくり下を覗き込みました。
なんという高さでしょう。
はるか下に雲があり、そのさらに下に小さく地表がみえます。
足元の岩も見ましたが、足場になりそうなところは、はるか下です。
それよりも問題は、強い冷たい風と寒さです。
過酷な環境が体温をどんどん奪っていきます。
いくらコートを着ているとはいえ、ここに長くはいられません。
(飛び降りるか)
とhunaは思いました。
以前も体験したように、これはすべて幻覚のはずです。
しかし、これが現実という可能性も捨て切れません。
迷っているとますます風が強くなってきて、体が震えました。
幻覚だろうとなんだろうと、この寒さには耐えられそうにありません。
hunaは目をつぶり呼吸を整えました。
(もしかすると、現実はさほど高い場所ではないかもしれない)と考えました。
小石を落とし、音と高さが一致しているかを
試してみる価値はあります。
hunaは足元の小石を拾い落とそうとすると、
下からcunaがふわふわ飛んでくるのが見えました。
(幻覚だ)とhunaは思い、cunaにむかい石を落としました。
ごちん、
という音を立てて小石がcunaの頭に当たりました。
(あそこで跳ねた、もしかすると本当の地上はあのあたりにあるのか)
とhunaは考えました。
「痛い、痛い」
と半べそをかきながら、cunaの幻があがってきました。
頭をおさえながらhunaの目の前にたちました。
「あなたは幻よ。」
とhunaは震えながらもいいました。
cunaは痛い痛いと泣きながら、hunaのことをたたきました。
どうも様子が違います。
「本物なの?」
とhunaが聞くと
「バカか!」とcunaが怒りました。
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「ばかばかばかばか」
とcunaはずーっと怒りながら、
hunaを背中にのせて降りていきます。
「ごめん。」
とhunaも何度も謝りますが、cunaの怒りは収まりません。
「なんであんなとこに逃げた?」
とcunaは腹を立てていいます。
「逃げたんじゃないの。支配人にやられたのよ。」
「嘘つき!」
とcunaはいいました。
「ひうな!」
と地上の馬車からunaが叫びました。
cunaの背中から降りたhunaは馬車に駆け寄ります。
「ひうな も とんでったのか?」
とunaが驚いていいます。
「違うのよ、支配人にあったの。」
とhunaがいいました。
「石までぶつけた!」
とcunaはまだ怒っています。
「支配人なんて、大昔の伝説だろう。」
と香水師はいいました。
「とにかく、ここの場所は危険だわ、早く抜けてしまいましょう。」
とhunaはいうなり馬車を走らせました。
馬車は雪を飛ばしながら、全速力で走ります。
cunaは不機嫌なまま、馬車の奥でフテ寝をしています。
珍しいことに、unaまでふくれっつらをしています。
「どうしたの?」
とhunaが聞くと、unaはひどく警戒した様子で首を振りました。
「おやおや、ロケットのことが知りたいんじゃなかったのかな。」
と香水師がいいました。
「話が通用するような相手じゃないわ」
とhunaは答えました。
(おやおや?)とhunaは背中に冷たいものを感じました。
香水師はこんな話し方はしません。
「はてはて、話が通じないとは失礼だな。」
と香水師は笑います。
横のunaをみると、ずっと香水師をにらんでいます。
「あなた何者?」
とhunaはいいました。
「まあまあ、少し体を借りただけだ」
とunaがいいました。
今度はunaの体に乗り移ったみたいです。
我にかえった香水師は、きょとんとした顔で成り行きをみつめました。
「なにして遊んでる?」
とcunaが顔を出しました。
それをみて支配人が乗り移ったunaがギクリとしました。
とっさにhunaは
「みんなでなぞなぞを出し合っているの」
といいました。
「なぞなぞか!」とcunaが顔を輝かせます。
そこでhunaは機転を利かせました。
「人探しのなぞなぞよ。いまウナに誰か別人が乗り移っているの。
乗り移っている人はどこにいるのかな?」
unaの乗り移った支配人の動きが止まりました。
「それなぞなぞじゃない。」
とcunaはふてくされました。
「乗り移っているひとは、なぞなぞ名人なのよ。」
「ホントか!」
とcunaは目を輝かせます。
「そうよ。その人は、ケンカで負けたら、好きなだけなぞなぞ遊びをしてくれるわ。」
「ケンカ得意じゃない」とcunaはいいます。
「だったら雪男を連れていきましょうよ。
あなたが雪男にのってケンカすればいいのよ。」
「そうか!」
とcunaはいいました。
そして「あの木のほうにいる!」
とcunaは叫びました。
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「おいおい、汚いぞ女王よ」とunaが小声でいいました。
するとすかさずcunaが
「なに?なんていった?」
と近寄っていきます。
cunaには幻が効かないはずです。
そのcunaが力の強い雪男に乗っかれば、
いくら支配人といえども苦戦するはずです。
「あの木の方向ね」
とhunaがいうと馬車は方向を変えました。
「逃げた。山のほうだ。」
とcunaがいいました。
「山へ向かって」
とhunaがいいます。
支配人が乗り移っているunaの顔にあせりの色がみえてきました。
「なぞなぞ名人を逃がしちゃだめよ。」
とhunaはいいました。
「氷の女王よ。わしと取引をせんか?」
とunaに乗り移った支配人がいいましたが、hunaはそれを無視しました。
しかしunaに乗り移った支配人は、落ち着いてもう一度いいました。
「お前たちの探しているロケットは、小さすぎるんじゃないのか?」
「…どういうこと?」
とhunaは聞きました。
「あのロケットは100人乗りだ。向こうの星に、
どれだけの数の仲間が待っているか知っているのか?」
とunaに乗り移った支配人はいいました。
香水師は、驚いた顔をしながらも、その内容を聞き入っています。
cunaが
「また逃げた、森にいった。」
といいました。
「飛んできたロケットにはほとんど燃料が残っていない、つまり
苦労してきて、ロケットを見つけても、飛び立つことすらできない。」
「嘘よ。」
とhunaはいいました。
「そう思いたければ、そう思えばいい。しかし氷の国はどうなるかな。」
とunaに乗り移った支配人はいいました。
hunaは無言で考え続けました。そして
「契約っていったわね。」
とhunaは聞きました。
unaに乗り移った支配人はにやりとしました。
「あるものをいただければ、お前の国もお前の仲間も助かる方法を教えよう。」
「あるもの?」
とhunaは目をつぶり聞きました。
「お前の命だ。」
と支配人はいいました。
「バカをいうな。お前はこれから雪男につかまるんだぞ。」
と香水師は口を挟みました。
「過信するなよ。雪男程度なんとでもできる。」
と支配人はいいましたが、説得力はありません。
「仮に雪男が私を襲えば、ロケットのことを教える気も失せるだろうな。」
とunaに乗り移った支配人がいいました。
「止めて。」
とhunaがいうと馬車は止まりました。
「どした?」
とcunaが聞きました。
「雪男に襲わせない代わりに、ロケットの場所を教えろ。」
と香水師はいいました。
「話にならん。多くの国民と仲間の犠牲をだすがいい。」
とunaに乗り移った支配人はいいました。
「本当にそれを教えてくれるなら構いません。」
とhunaはいいました。
「なにをいっている。やめろ。」
と香水師はいいましたが、気を失いました。
今度はunaから香水師に乗り移ったようです。
「ただし、命を奪うのは本当に国と仲間が助かってから、であればです。」
とhunaはいいました。
「ならば、契約成立だ。」
香水師に取り付いた支配人は強い口調でいいました。
「ここより更に北に向かうがいい。燃えさかる火の海がある。
その火は現実の火ではない。海のなかを歩いて進むがいい。
そこには箱舟と呼ばれるロケットがある。
それに乗れば向こうの星にいき、仲間を救うこともできるだろう。」
と香水師に乗り移った支配人はいいました。
「箱舟とはなんですか?」
とhunaは聞きました。
香水師に乗り移った支配人はそれには答えずにこういいました。
「今後は私は幻覚をみせないでおこう。つまり起こることはほ現実だ。
契約前に命を落とすなよ。」
香水師の顔色が元に戻りました。
「にげた!にげた!」
とcunaはいいましたが、
真っ青な顔をしたhunaは馬車に号令はだせませんでした。
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